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若い人へ。 [医療関係]

私は、仕事で何かに行き詰った時、この記事を読むことが多い。
薬剤師の雑誌「Pharmavision」の2004年4月号編集者高見明子さんの記事だ。

『若い人へ

学卒の方も、また他業種からの転職組も、あるいは長らく箪笥の奥底にしまってあった薬剤師免許を引っ張り出して薬局現場に初めて出るという方も、ようこそ、この職場へ。

さて、あなた方は職場の先輩から、この仕事は病を抱える人々の救済の一端を担う、尊い仕事だと教わったのだろうか?
あるいはまた、処方権は医師にあるのだから、医師の指示通り、粛々と調剤するのが仕事だと教わったのだろうか?
それとも、薬局というのは、医療提供施設であると同時に商行為を行う場所であるから、コスト管理と売り上げ増進に寄与しなければならないと教わったのだろうか?

そして、薬剤師の仕事を理解してくれず、間違いなく調剤さえしてくれればよい、服薬指導は結構と言い切る患者さんが中にはいることを知らされたのだろうか?
また逆に、薬剤師に強い依存性を示し、自分では何も決められず、べったりと寄りかかってくる患者さんもいることを知らされたのだろうか?
それから、患者さんはなかなか本当のことを言わないということを教えられたのだろうか?
さらに、ほんの一握りかもしれないが、薬剤師に感謝の意を表する患者さんがいることを教えられたのだろうか?

どれも正しく、現実であるが、一側面を取り上げて全体を論じてはいけない、精神論に過ぎてもいけない、矜持を忘れてもいけない、実利に走ってもいけない、患者さんの思い込みに惑わされてもいけない、ましてや、自らの内に猜疑心を育ててはいけない。

そして、あなた方の先輩が、この仕事の本質はとても楽しい仕事なのだと教えてくれたならば、あなた方は幸せ者だ。

だが、幸せ者のあなたも含めて、是非にお願いしたいことがある。あなた方の新鮮な目で、薬局業務の改善を提案して欲しいのだ。もちろん指摘ではなく、提案である。習い性となっていると問題点が見えないことはよくある。あるいは慣れているというだけで、安全点検ができていないこともある。3ヶ月程度は小生意気なことを言っても許されるはずである。軋轢が生じたら率直に謝ればよい。
とはいえ、相手は経験豊かな諸先輩。分をわきまえ、相手との距離を十分推し量りながら、提案するのが人の道というものだ。改善する余地のある職場で薬剤師業務に当たれるあなたは幸せ者であるはずだ。』

私は、幼い頃から薬局で働く両親を見て育っている。
1階が店舗、その上が我が家であったからだ。
学校から帰る時、いつも薬局を通って、自宅に入った。バブル期でチラシ効果でものすごく忙しかった時も、この店だけであったら閉局していただろう現在も、見ている。
薬局とは、厳しい場所なんだと思っている。
まず、人の命、生活の質と真正面から向き合う場所であり、その一助を担っているからだ。
私は親から、何度もお客様がいる時は、職場に顔を出すことを禁じられた。子供のくるところではないと言われた。今もそれは根強く私の中に息づいている。
そう、、、ここはとても厳しい場所なのだ。
ミスをすることは許されない場所なのだ。私にとって、一日応対する何十人のうちの一人であっても、その人にとればその瞬間が全てである。ミスをしたら、それはその人の健康に危害が及ばなくとも、信用は確実に失う。
人の信用を失うことほど、簡単なことはない。そして失った信用を取り戻すことほど、難しいものはないだろう。
それでも人であるから、誰しもミスはする。ミスをしない人間などいない。
その着眼点のもと、いかにミスを減らすか、ミスをしてもお客様に接する前に止められるかを考える。
私は白衣を着ている時は、別人のように厳しい人に変化する。
自分でも変化してると分かるし、他人からも言われることだ。
私は、白衣を着ている以上、全ての基本は患者・お客様サービスにあると思っている。お客様が第一だ。
どんなに自分が疲れていようと、他に心配事があろうと、家族が死にそうであろうと、目の前のお客様にとったら、そんなのは関係ない。お客様に誠心誠意接する。中には白衣を脱いだ自分が、不満を言いたくなるような患者やお客様に出会うこともある。でも顔には出さない。笑顔で接する。
何を当たり前のことを偉そうに若造が!、と思われるかもしれないが、事実それが出来ない人が医療の現場には少なからずいるのだ。。。そう、我が薬局にも。。
薬局の中で仕事をしているのならば、白衣を着た薬剤師も、ナースエプロンを付けた受付事務も、同じ医療従事者として患者さんは見てくる。そこに新人もベテランもない、、私達はプロなのだ。
プロならば、己の力で研鑽し、己の責任で動く。
人として良いことは素晴らしいことだが、必ずしも医療従事者に求められる資質ではない。
人が良いというのは、他人との協調性に優れているかもしれないが、一方で自分では判断出来ず、或いは判断することすら放棄している。惰性の仕事をしているかもしれない。
人が良いというのは、医療の場以外なら、人としての資質では優れているかもしれない。
しかし、この現場では、人が良いだけではやっていけない厳しさがある。
ミスのない仕事という結果が求められる。治ったという結果を求められる。
もちろん結果を行うための過程も大切だが、やはり結果で判断される職場なのだ。

薬剤師になって8年目。
このまま調剤のみを主眼に仕事をやっていくつもりはない。
私は私の理想の薬剤師像が、小さい頃から一つの形としてある。
薬局のカウンターに立ち、穏やかに微笑み、患者さんの話に親身になって答え、的確なアドバイスが出来る。
言葉にすれば安っぽいかもしれないが、その境地に立つには果て無き努力をしなくてはならないだろう。
私は薬剤師だ。
そのことの誇りは、まだ胸の中に赤々と燃えている。


2007-07-06 23:57  nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(0) 
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なち

>ミィシャさん。
niceありがとうございます!
by なち (2007-07-08 22:03) 

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